海外に行くと、海のコンディションもさることながら、文化や、習慣、考え方の違いなどで、いろんな意味で衝撃を受けることが多い。
今回は今までで1番の衝撃体験を紹介します。
今から10年近く前の、まだ内戦が終結していないスリランカでの体験
10日間のトリップを終え、かなり早めにサーフガイドに空港に送ってもらい、サーフボードとウインドの道具一式のチェックインを無事に終らせて、
ほっと一息ついている時に、それは始まった。
空港内に並ぶ航空機を見渡せるベスポジに座り、薄暗くなりかけている空と行き来する飛行機を眺めていると、ちょと異質な、というか、
かなり異質な物体が左から右に向かって水平に飛んでいるのが目に飛び込んできた。
見えたのは確か3機で、等間隔を保って飛んでいる。
結論から言うと、それはミサイルだったんだけど、最初はなんだあれ?!って感じで、まさかミサイルとは全く思わなかった、というか、
何か未知の生命体のような異様なオーラみたいなものを、まとっているようにも見えた。
相棒は隣で、ヘッドホン&MacBookでスターウオーズに夢中だし、周りにこれに気付いているっぽい人は皆無だった。。。
この時ミサイルである認識は全くないので恐怖も焦りもないし、誰かに知らせなければという義務感もない。
なのに心臓だけがバクバクしてきて、少し息苦しくなったのを覚えている。
意識では恐怖や不安は感知していないのに無意識ではすでに何が起きているのか、何が起きようとしているのかを察知している状態。
虫の知らせではないけど、そんなような体験は過去に何度かあったと思う。でもそれが今までで1番はっきり分かる瞬間だった。
至近距離でミサイルが飛んでるのなんて、もちろん見たことはない、噴射で後ろがオレンジ色に光っているのなら分かるんだけど、
それらは輪郭全体、前から後ろまで周り全てがオレンジ色に綺麗に縁取られるように強く発光していて、黒にオレンジで、なんとも異様な雰囲気を醸し出していた。
おそらくは湿度の高い南国なんで、空気との摩擦熱で輪郭がオレンジになっていたんだと思う、あるいはミサイル全体がかなりの熱を帯びていたのか。
何れにしてもトワイライトタイムに美しく発光していてミサイル感は全く感じなかった。
でも、今思うと形はまさにマンガのようなミサイルのそれで、なんで分からなかったんだろうとも思うが、異様なオーラにカモフラージュされたのと、
異様にゆっくり飛んでいるように見えたので、
高速で空気を切り裂いて飛んでいく空想の中のミサイルのイメージとのズレが大きかったんだと思う。いわゆる思い込み。。。
ただ、やはり、人間が作り出した物の中でも最低最悪の物の一つだし、その異様さといったらハンパなく、
10数秒後にその任務を遂行しようとしているその姿と、異様な空気感は言葉では説明できない。
10数秒くらい後に、空港隣の政府のビルにそれが着弾し、なんとも恐ろしい轟音をともなう爆発音が空港内に何度も響き渡り空気が一変した。
おそらく、たった今、たくさんの人がすぐ近くで死んだ、このあと何人死ぬのか?誰が死ぬのか?俺と相棒は生きて、あるいは五体満足で日本の地を踏めるのか?
着弾した方向からスリランカ人の客室乗務員が泣きじゃくりながら目の前を走り去り、自動小銃を持った若い軍人は目の前で足がもつれて子供のように転び、
長い内戦状態に慣れているはずの現地人の異常な慌てぶりが、今ここで起きている現実がいかに非常事態であるのかを物語っていた。
まさにこの場所で戦争が始まったということを受け入れるしかない。心の準備もなく戦争の最前線に丸腰で立っているという現実を。。。
そして飛び交っているのは銃弾だけじゃなくミサイルだ。直撃しなくても近くに着弾しただけで死ぬ、それどころか誰の死体かすら、わからないような状態になりかねない。。。
無意識にそんな悪いイメージが頭をよぎり更に勢いを増して鼓動が高鳴り、普通に呼吸することが困難なくらい呼吸が乱れ、何度も深呼吸をしたのを覚えている。
それでも鼓動の高鳴りは治まらない、意識が恐怖に支配されそうで、辛く、苦しい、でも反面、そのせいで意識は非常にクリアで研ぎ澄まされていて緊張感は高いが冷静さは保てている。
生死を分けるような判断でも瞬時に的確に下せる状態、海上で入る感じとは少し違うが、おそらくは体の命令系統が、
自分の意思や意識から無意識の方に切り替わったような状態、いわゆるゾーンというヤツだ。
心が、意識が恐怖に支配されてしまうと、おそらくは判断を誤ってしまう状態に陥る。
幸い生死を分けるような判断を下す局面には遭遇しなかったが、かなり客観的な自分も共存して居て日常では気づけないようなことに、いくつか気付くことができた。
2階から1階の民間人が集まっているエリアに移動すると、次の瞬間、空港内の照明が突然ダウンして人の顔がやっと識別できるくらいの、かなりの暗闇になった。
さらに次の瞬間、まさに追い打ちをかけるかのように、ガラス1枚だけ隔てた、
ほんの5m横で戦闘機を打ち落す地対空迫撃砲の砲撃が何の前触れもなく空に向かって始り、
静まり返っていた暗闇に、どんな想像力を発揮しても絶対に想像できないくらいの圧倒的な迫力で暴力的な銃撃音が鳴り響いた。
えい光弾といって弾道や着弾点が分かりやすいようにオレンジ色に光りながら飛ぶ弾で、それがより一層迫力を増して見せた。
戦闘機が打ち落とせるくらい近くに迫って来ている、何機いるのか?銃撃してくるのか?爆撃してくるのか?想像力がさらなる恐怖心を煽る。
その状況が、どれだけ恐ろしいかを物語るかのように、俺たちの隣にいた同世代くらいの白人男性が、
あまりの迫力と恐怖で口から泡を吐き、小刻みに震え、うなりながら気絶していった。。。人間が恐怖だけで気絶していく様を初めて見た。
それをすぐ隣で見届けた俺と相棒はまさに絶句で、目を合わせただけで何も言葉を交わせなかった。。。
彼の意識は完全に恐怖に支配されてしまったようだ。
そのほんの5m横にいる政府軍の狙撃手はどうやら反政府ゲリラの戦闘機を撃ち落としたらしく戦闘はあっけなく終わった。
俺たちの隣で懸命にゲリラと戦い、撃ち落としてくれた優秀な狙撃兵と握手したい気分だったが、その時はまだ、これで終わったという認識はなかった。
その後、電気も戻り、空港のテレビに撃ち落とされた反政府軍の軍人の遺体が並べられた映像が、おもむろに映し出された。
あまり見る気にはなれなかったが、かなり損傷した死体もあるのに日本と違って包み隠さず、顔までアップで映し出しているのがリアルで印象的だった。
驚いたのは、その後たったの3時間遅れで、俺たちの飛行機が飛び立ったこと。
空港が爆撃され戦場になり当分帰れないものと思い込んでいたので、ガイドに迎えに来るように電話で頼んだあと、飛ぶと伝えられた。
日本に帰れるのは嬉しかったが、まだ反政府軍のゲリラが残っているんじゃないか?
俺たちの飛行機を狙ってくるんじゃないかと離陸後2〜30分は不安でしょうがなかったが、無事射程圏外に出ることができた時に初めてホッとした。
正しい思考と想像力
ミサイル、こいつが抑止力という目的ではなく、純粋にそれが作られた目的を遂行しようとする姿を目の当たりにすると、こんなものを作る人、設計する人は
キチガイなんじゃないか?って気持ちになる。ミサイルが人々に向かって飛んでいく様を間近で見るまではそんなことは考えもしないし、想像もできなかったけど、、、
おそらく、俺と同じ光景を造った人が見たら耐えられないと思う。平気だったらキチガイだ。
普通のミサイルですら、そう思うのに核ミサイルなんてものは想像を絶する。
かつて、アルバートアインシュタインが自分の理論で原爆設計の可能性を考え、抑止力として開発中のナチスよりも先に設計してほしいとの趣旨の手紙をスーズベルト大統領に送り、
設計に成功後、日本に落とされる可能性を知ると直ぐに、全力で阻止しようとしたという。
戦時中だったし、正しい思考と神のような想像力持った男なので当たり前だが、戦争のできる国造りをしようとしている日本の、あるいは北のロケットマンと呼ばれたり呼んだりしている、
まるでリアルバカ殿のような政治家さん達に、正しい思考とそんな想像力を期待する余地は全くない。そういう方々には1度戦争の最前線を経験させてさしあげたい。
本来なら国のトップに立つような人間は、正しい思考と、そのぐらいの想像力を持っていて欲しいところだ。
詳しいことは知らないが、オバマさんは形の上では核を減らす方向で動いていたように思う。
今も名目上はそういう動きだけど。。。
まぁ、それはいいとして、外から見てるのと現場の当事者とでは見えてる世界が全く違うという事も、あらためて、ものすごく痛感した。
たとえば海でも陸から見てるのと実際入って体感するのとでは全く世界が違う。
エキスパートになると完璧とはいかないが経験から幅広いコンディションで、かなり正確にイメージ、想像が、できるようにはなる。
想像力は偉大で、人間が作ったものは、ほぼ、想像力から作られたと言ってもいい。人間が持つ能力の中でも最も偉大な物の一つかもしれない。
そしてそれは何かを極める事によって、いくらでも高める事ができるし、その高めた能力は他の分野でもある程度、あるいは、かなりの応用が可能だ。
正しい思考の元に発揮された想像力は、その人、あるいは人類にとって素晴らしいものをもたらすと思う。
海でやってみたい動きがあったら、自分がそれをやっている姿を何度も何度も、できるだけリアルに想像してみることをお勧めする。
集中して、かなりリアルに細部までイメージできるようになれば、その瞬間を必ず現実のものとして体験することになると思う。
あるいは南国で、美しい波、凄い波に乗っている姿を想像するのもいい。
重要なのは、できるかな? と考えるのではなく、やると決めてしまう事。
記憶。。。これを書いたきっかけ。。。
強い記憶には必ず強い感情が伴う。
多少は薄れてきてはいるし、記憶違いみたいな部分もあるかもだけど、この出来事は強く記憶に残っている、
それこそ、来世に行っても残っているんじゃないかと思うくらい。
それは強い恐怖や緊張感がセットになっているからだと思う。
先月、訳あってhuluの無料お試し登録をして無料期間があまったので、前にテレビでちらっと観て気になってた、ブラピ主演のWORLD WAR Z
という映画を観て、当時と同じような恐怖と緊張感や集中力が伝わってきて当時の事をリアルに思い出したのがきっかけ。
映画の中ではブラピも軍人ではないけど、スリランカの内戦を現場で経験しているという設定。
まぁ、所詮映画ですけど。。。
戦争以外では。。。印象に残っているのは、宿のオーナーに聞いた話。東北地震の10倍の人が命を落とした2004年のスマトラ沖地震の津波で、
スリランカも大変な被害にあったんだけど、津波がくる1週間くらい前から鳥以外の動物は全て海近くから居なくなったという。
なんでだろう?何が起きた?と、海際の街では、かなり話題になり、みんな不思議がっていたという話を聞いた。
本来動物全てが持っているはずの能力を人間だけが失ってしまった。と、俺は思う。(持っている人もいるけど)
あと、もう1つ、実は波より印象に残っている、毎朝パドルしながら眺めた、どの国の夕陽よりもオレンジ色で幻想的なスリランカの朝日。
あまりに幻想的で、違う星にサーフィンしに来たみたいだな!とか話しながらパドルしてたのを思い出す。